SFファンなら大抵は知っているであろう、新城カズマさんの名作小説『サマー/タイム/トラベラー』。
ストーリーの感想は過去のブログにもちょっと書いたし、ネットのそこら中にあるのでここでは触れない。
私はこの作品が大好きなのだけれど、ふと思い出したことがあったので書いておくことにする。
この作品の中に登場する人物の一人・響子は、かなり変わった女の子である。
お嬢様で、Amazonマニアで、文芸部の部誌に小論文を発表し、〈プロジェクト〉と称してみんなでミステリーサークルを作ったりしている。
そんな彼女が作った一つの〈倶楽部〉。
それは、誰かが自分を監視してくれる奇妙なネットサービスだ。
そのサービスを通して、数々の人が自分を監視してくれることで安心する――そんな不気味なことをやっているのである。もちろん、彼女もその〈倶楽部〉の一員で、自分のプライバシーを公開しているし、他人を見てもいる。
このプライバシーという概念を変えてしまうような世界は伊藤計劃さんの『ハーモニー』でも描かれているのだが、『サマー/タイム/トラベラー』の方が先である。
これより前の未来像と言えば、ビッグ・ブラザーが国民を監視するようなディストピア物が多かった。
しかしこのサービス、TwitterやmixiやFacebookなどに似てないだろうか?
私的なことを簡単に全世界に発信する――プライバシーをさらす――ような未来社会を誰が想像しただろう。
そういった点でも『サマー/タイム/トラベラー』は面白い小説だったなぁと思うのである。
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